経営情報学会 東海支部 2020年度 学生研究発表大会 
審査結果の発表

   
【総評】 審査委員長 赤尾嘉治

    この度は経営情報学会東海支部2020年度学生研究発表大会への応募ありがとうございました。 また、入賞された方々、おめでとうございます。
  審査員を代表して、コメントさせて頂きます。
  先ず、研究テーマの選定においては、オリジナリティ、社会人基礎力の習得、専門知識の活用、社会化実験などに重きを置くべきと考えます。
その中で、次のような傾向があるとの印象を受けました。

①研究表題にあるテーマとアプローチで、データ数を増やすなど調査を充実されれば更に精度の高い研究内容になると思われます。
②机上論で終わらない実践的な研究が、社会貢献する展開となってほしいものと考えます。
③先行研究を読み取り、更に一歩前進させて行く研究プロセスが具体的な課題への解を求める挑戦となっています。
④応募時点で提案のフェーズでしたが着眼点が良くまた分析がよくできていたので、結果の活用が今後期待できます。

  このような数々の研究成果が、昨今の社会変動と改革への要求の強さに打ち勝って有意義な社会生活を送られる糧となることを望みます。
今回の応募が一つのターニングポイントへのトリガーになることと信じてやみません。


□審査委員

  赤尾 嘉治 (委員長)
  伊東 暁人 (静岡大学人文学部・教授)
  増田 靖 (光産業創成大学院大学・教授)
  保田 洋 (甲子園短期大学・講師)
  吉田 信人 (ちかと経営研究所・所長,中小企業診断士)

  

タイトル

所属

氏名

概要 審査員コメント
01 【優秀賞】

浜松市の起業家精神の変化について

静岡大学
情報学部行動情報学科
金子裕幸   日本では近年起業が注目されており、起業家精神が旺盛な街として静岡県浜松市が知られている。また、国単位で起業家精神を計る調査が行われており、起業家精神について定量的に示している研究が存在する。しかし、一つの地域に対して継続的に調査を行い、経年変化を考察した研究は多くない。 そこで、本研究では浜松市の起業家精神の実態を定量的に示し、経年変化を考察することを目的とし、起業家精神を向上させるための議論の一助とする。Global Entrepreneurship Monitor (GEM)を援用した調査票を使用し、2018年8月、2019年9月、2020年9月に静岡県浜松市の20歳以上70歳未満の男女にアンケート調査を実施した。その結果を「はままつ起業家」でのインタビューを通じて検証した。 浜松市の起業家精神の経年変化の要因として、2018年8月から2019年の9月は「副業解禁」が、2019年9月から2020年9月は「コロナウイルス流行による経済の悪化」が考えられる。 着眼点が非常に良かったと思います。インタビューの件少人数を増やすことが今後の課題かと思います。コロナの影響と普遍的な精神的なものとをもう少し分析・考察する事によって更に良いものになると思われます。
02 【優秀賞】

緊急事態に対する医療従事者の危機意識と行動変容の関係

静岡大学
情報学部行動情報学科
牧村燦吾   病院では,自然災害の発生といった緊急事態時における医療の継続性を高める ために,定期的に災害演習を実施している.しかし,それが危機意識の向上や行 動変容に結びついているかを効果的に評価する方法は確立されていない.   本研究では,従来研究の調査結果に基づき,医療従事者の危機意識と行動の変 化を「危機意識・行動変容メカニズム」として提案した.そして,これに沿った アンケートを作成し,ある災害拠点病院で調査を実施し,226名の回答を得た. その後,回答を集計比較とグラフィカルモデリングで分析し,危機意識や行動に 変化が生じた人とそうでない人におけるメカニズム上での違いを特定した.この 結果は,今後,変化を促すような演習の立案に活用できる. 医療現場は常に緊急事態で有り、そこへ危機意識を持ち込むことでより高度な行動変容が生まれる可能性が感じられます。対象病院も増やすことで、もっとよいモデルの作成ができそうですね。
03 【優秀賞】

 Instagram におけるメディア・エンゲージメント要因の探索的因⼦分析〜SNS を⽤いた観光PR効果の検証と考察〜

愛知淑徳⼤学
創造表現学部
メディアプロデュースコース
⽯川梨奈・川⼝海・佐藤なつは・⽇⽐若菜   本発表は「この研究では、2019 年6 ⽉時点で⽇本国内のユーザー数が約3,300 ⼈に達したSNS サービス「Instagram」のメディア・エンゲージメント要因を明らかにするために質問紙調査を ⾏いました。画像共有としてスタートしたInstagram は、企業が広告のために配信するプロアカウント機能やEC 機能の「Shops」を装備し、いまや企業の収益獲得に⼤きく関わって います。本研究では、雑誌広告に対する読者のエンゲージメント要因を探索した、石崎・他(2011)の追試を⾏い、Instagram が利⽤者に雑誌のようなメディア効果を持つのか、また、 持つとしたらどのような要因を持つのかを、4つの地方自治体の観光協会が運営するアカ ウントを対象に調査して、⽐較と考察を⾏いました。   Instagramでの広告効果についてよくわかった。企業用のアカウントなどでの調査結果も期待したいです。エンゲージメントの結果で、視聴者の実際の行動の関係性が繋がっていくと新たな結果を創出する事になるとおもわれます。
04 【☆金賞☆】

YouTube 動画における共感の発⽣要因とコミュニティ要因についての考察〜4種類の動画ジャンルを対象とした探索的因⼦分析〜
愛知淑徳大学
創造表現学部
メディアプロデュース専攻
後藤彩月・長谷川鈴佳・花木友香・松下詩帆   私たちの卒業研究では、2000 年代に⼊り国内でユーザー数が右肩上がりを続けている動画共有サービス「YouTube」を対象とし、コンテンツ発信者と、発信者を⽀持するユーザー との間に作り上げられる「共感」の要因を明らかにするため質問紙による調査を⾏いました。YouTube における発信者の収益獲得には、ユーザーに対し継続的視聴を促すことが必要に なります。チャンネル登録数・視聴数の多い発信者は、動画に対するユーザーの書き込みも多いことから、成功要因にはデジタル空間でのコミュニティ作りがあるのではないかとい う問題意識を持ち、⽵内(2016)でFacebook を対象として調査された「共感の発⽣要因」を⽤いてYouTube 特有の要因の探索的分析を⾏いました。   SNSとのYouTubeの共感要因との関係がよく分かった。回答者の人数を増やすことで、もっといい結果がえられそうです。 SNS依存性へのアプローチは面白いので、アプリの多様化している現状・将来への存在意義が高まるような結果がきたいされます。
05 【審査員特別賞】

名古屋ダイヤモンドドルフィンズ連携プロジェクト⾼関与消費者についての調査分析と、デジタルコンテンツを⽤いた施策提案
愛知淑徳大学
創造表現学部
メディアプロデュース専攻
⽚岡尚⼦・佐藤千⾹・橋⽖美佳・若杉美玲  2019 年10 ⽉より取り組みを⾏った、愛知県名古屋市のプロバスケットボールチーム「名古屋ダイヤモンドドルフィンズ」と学⽣との産学連携プロジェクトにおける調 査内容と成果についてです。この取り組みでは、継続的にチームを応援してくれるファンとのエンゲージメント強化のため、和⽥・他(2015)で論じられた「⾼関与消費者」の没⼊フ レームワークに基づき、顧客ロイヤルティ強化の施策と、デジタルでのコンテンツ配信を⽤いた応援プランの策定を⾏いました。フィールドワーク調査から導き出し、チームに対して 学⽣が提案した施策は、⼀部、実際にチームの運営に取り⼊れられました。 ファンの分析に対しての分析がよくできていた。この結果の活用が今後期待できます。産学連携へのアプローチはとてもよく、ファン獲得の手法は多数ありので、更なる最適化への挑戦をして欲しいです。 
06 【審査員特別賞】

ある中小畜産企業へのIT導入に関する考察
静岡大学
情報学部行動情報学科
田中 健斗   日本の養豚業界における中小企業の廃業を防ぐためには、生産性を向上させる必 要がある。そこで、管理の記録を取る際にITを用いることで、豚の管理を確実に 行うことができる。本研究では、紙媒体のみで記録を取っている業務に導入する ITシステムの開発を行い、その効果を考察することを目的とした。実在する中小 畜産企業を対象にPBLを通して研究を行った。まず養豚業務とその際に取る記 録、業務における問題点を明らかにした。次に、ITシステム要件を検討し、それ に従ってシステム開発を行った。そして企業へのテスト導入をし、評価、考察を 行った。その結果、IT導入の効果として、データの確実な保全と即時共有、過去 データの有効活用を可能にすることができた。 システム化されてない業務のシステム化の取り組みへの着眼点が良かったです。会社経営にも繋がるシステムに期待します。データによる管理を行うことによって、質や生産性の向上に繋がるものへの分析と考察を続けていただきたい。
07 【研究奨励賞】

学生向けプラットフォームアプリの他大学展開におけるネットワーク効果
静岡大学情報学部行動情報学科 伊藤彩花   近年、様々な分野でプラットフォーム戦略を活用した事業展開が行われている。このようなサービスにおいては顧客数の増加によって製品やサービスの価値が向上する、ネットワーク効果が顧客獲得に対して大きな要因となる。本研究では、事例が少ない大学間に展開する学生向けコミュニケーションアプリのプラットフォーム戦略に着目する。現在リリースされているモバイルキャンパスアプリの新バージョンを開発し、他大学に向けて展開することで、顧客の範囲が広がり、既存顧客及び新規顧客に対するネットワーク効果が発生する。これによりプラットフォームとしての価値が高まり、さらなるサービス向上が期待できる。 なかなかいいアイデアだと思います。今後は、アンケート結果の内容が重要かと思います。利用目的とコンテンツ提供の相関関係と解析が十分になされて、アプリ開発の研究に有機的に連携していけると思われます。
08 【審査員賞】

感染症社会実験のためのiBeaconと端末間距離測定チューニング手法検討
静岡大学情報学部行動情報学科 畑穂乃香・森岡美冴   近年、既存のウイルス感染症拡大シミュレーション解析がCOVID-19の対策として世界的に活用されている。しかし既存の解析では設定できるパラメータは限られており、詳細な解析は難しい。そこで社会環境の異なる組織(学校、企業等)で実験的シミュレーションを実施し、社会データと既存の解析を統合することでより確度の高い感染流行予測が期待できる。 その社会実験に用いるウイルス感染を模したBluetooth通信を行うアプリケーションの開発にあたり、Bluetooth通信において電波強度からデバイス間の距離を予測する必要がある。本研究ではデバイス間の距離予測の精度を上げることを目的として、様々な条件下で電波強度から距離を測定し、理論値と実験値のギャップを埋めるチューニングを試みる。 着眼点が非常に良かったと思います。データを増やしてのモデル化に期待します。手法の改善に向けての可能性が十分に考えられ、実用化への道も垣間見れます。
09 【優秀賞】

医療機関における教育の一元管理に向けた基盤構築

静岡大学
情報学部行動情報学科
高田紗希   病院では,効果的な教育の実施に向けて,定期的に内容を見直している.教育の検討や見直しのためには,まず実施されている教育の全体像を把握し,内容の重複や抜け漏れを確認する必要である.その方法として,研修の内容や対象者といった情報を収集し,それをデータベース(以下,DB)に登録することが考えられる.しかし5つの急性期病院にインタビュー調査を実施したところ,体系的に教育を管理できているとはいえない状態であった.そこで本研究は,現状の病院教育の問題点から,DBに登録すべき教育情報を特定した.そして,病院の実情に即し,教材を読み込み,そこから逆算的に教育情報をDBへ登録できるアプリケーションを提案した. 既存システムの改善点を洗い出しがしっかりできていた。今後の実運上のシステムの開発に期待します。教育の一元管理の基盤は既に在るのでその上に構築すべき管理要素を充実させていけば、幅広い応用の展開が出来るように思われます。
10 【審査員特別賞】

英語圏における日本アニメのレビュー文とあらすじに対するテキストマイニングによる評価要因の分析

静岡大学
情報学部行動情報学科
中澤奏音   海外における日本アニメの市場規模変動や評価の要因について,見解や考察が述べられている一方,作品の内容や作品に対する評価に基づいた定量的な分析は行われていない.本研究では,多様性が日本アニメの世界的支持をもたらしたという主張の検証,及び海外での日本アニメの評価要因を調査することを目的とする.多様性動向分析では,作品のあらすじ文をベクトル化し,X-meansクラスタリングとSumCos値の算出を行った.評価要因分析では,作品に対するレビュー文における評価表現の抽出,及び極性辞書を用いた評価語の分類を行った.
アニメなどコンテンツ産業への期待が高まる昨今、ビジネスの視点からも意味のあるテーマと思います。多くのデータを用いて「多様性」の状況を定量的に明らかにしている点はよいのですが、「多様性が日本アニメの世界的支持をもたらした」ということはまだ十分な検証ができていないと思われますので、今後に期待します。それと、プレゼンテーションが早口で平板なので、語ることを絞り込んでゆっくりとはっきり、メリハリをつけて行うように心がけてください。 英語圏における日本アニメに対する、評価がよく分析されていた。この結果を今後の活用に期待します。各種の手法を駆使して評価・分析を行っているので結果の考察の次のステップへ挑戦してみてください。
11 【☆銀賞☆】

Webアンケート調査による感性評価用語の選定方法に関する研究

静岡大学
情報学部行動情報学科
劔持奈奈   各々の感性で評価が変わる品質を感性品質という.感性品質を考慮したPDを設計する際,まず,被験者が商品から感じる印象や感想を心理的反応の評価用語として収集する.次に,その評価用語を用いてアンケートを設計し,サンプルを評価してもらう.そのため,評価用語の選定は,研究結果を大きく左右する.従来は,対面のグループインタビュー調査で評価用語を収集していた.しかし,Webアンケート調査のほうが,手軽により多くの評価用語を収集できると考えられる.そのためには,Webアンケート調査の方法を工夫し,グループインタビュー調査と近い回答を引き出す必要がある.そこで,両調査間の差異を明らかにし,それを埋めるWebアンケート調査の方法を提案する. 分析が良く出来ていました。お茶以外の物でも同様なことになるか、今後の研究で行うことで、精度がでてくるのではないのでしょうか。企業に取っては重要な課題で、設定した評価基準と実際のマーケット情報の分析の考察に繋がると楽しみです。
12 【☆銅賞☆】

ゲームを活用したプロジェクトリーダー育成法の提案

静岡大学
情報学部行動情報学科
石橋正暉   近年、作業の自動化やコロナ禍によるリモートワークの急速な普及等による働き方改革の促進によってプロジェクトマネジメントスキルが重要視され、人材不足に苦しむプロジェクトを牽引するリーダー育成が急速に求められている。プロジェクトマネジメント教育の現状について、リーダー育成に対して十分な教育を行うことができていない企業が多く存在しており、高齢化に伴う優秀な教育者の不足、プロジェクトの短納期化により教育に時間を回すことができない、プロジェクトリーダー育成に必要とされる経験が不足しているという課題が挙げられた。そこで本研究では、新たなプロジェクトリーダー育成法の提案として、プロジェクトを疑似体験することができるプロジェクトマネジメント遂行ゲームの開発を行い、プロジェクトリーダー育成に対する効果を考察した。 プロジェクトマネジメント教育に同じような教材があるため、その教材との違いがどこであるかをアピールしてもらえればなお一層よくなると思います。進捗は計画との差異に基づく調整が重要となります、計画の評価を行う局面が充実すると更に良くなると思われます。
13 【研究奨励賞】

QRコード決済のセキュリティとUIについての考察

静岡大学
情報学部行動情報学科
松本和樹 キャッシュレス化が進められている中で生まれた新しい決済方法がQRコード決済である。本研究では未利用者、週1回未満利用者に分けて使わない理由、利用が少ない理由をアンケート調査、ヒアリング調査を行った。また各サービスのUI・セキュリティ比較調査も行った。その結果、未利用者は「登録が面倒だから」、週1回未満利用者は「チャージが面倒だから」がその理由であることが判明した。UI・セキュリティ比較調査では、使いやすさとセキュリティのトレードオフの関係を明確にすることができ、さらに各QRコード決済のUI評価、セキュリティ信頼度、総合評価の三つの視点において、各利用者帯の傾向を把握することができた。結論として入金する必要がないサービスが提言された。   キャッシュレス化についての利用の状況とユーザの思いが良く分かった。この情報を今後どのように生かすかが今後の課題化と思います。決済のセキュリティのデータ分析比較で、UIの研究成果と課題解決の方向性が重要であることがよくわかった。
14 【審査員賞】

映画口コミによる評価予測-ジャンル別評価要因の考察に着目して-

静岡大学
情報学部行動情報学科
與野木龍   映画館以外の場で映画を鑑賞する人の増加と,オンラインの口コミを利用する人が多いことで,今まで以上に映画の口コミの評判が重要になると考えられる. 本研究では口コミの評判を意識した映画制作のためのデータ分析を行う. 共起ネットワークによる分析,評価予測,重要単語の抽出,映画の要素に関する分析をジャンル別に行い,それぞれのジャンルで重要とされる事を明らかにした.また,重要単語を用いた映画評価との対応分析を行い,単語と評価の関係を可視化することができた.   本研究の課題として評価予測の精度の向上があげられる.また,今後の展望として単語を活用してのマーケティングや,制作前に映画の評判の予測をすることも考えられる. 映画の製作に対して、今後プラスになる分析であることがよくわかりました。アニメーションが対象になっていないので鬼滅の刃などの分析が気になるところである。サスペンスとアクションの関係性が面白いのでもう少し考察して欲しい。
15 【研究奨励賞】

学生による企業の広報動画制作プロジェクト

静岡大学
情報学部行動情報学科
遠藤佑太朗・大木貫太・苅和篤志・柾竣介   浜松周辺の中堅企業の協力を得て企業の広報用動画を学生が主体的に制作するプロジェクトを行った。 本報告では企画、成果物、評価について報告する。本プロジェクトを通じて学生は 企業を深く理解する機会となり将来のキャリア形成に役立てることができる。さらにコミュニケーションスキル、動画制作スキルを向上させることができるなどメリットが多い。一方、企業側にとっても、学生目線に立った自社紹介の動画を制作することで採用活動に役立てることができるというメリットがある。 動画を作成して、企業にとってどのような効果があったなどを今後の研究の成果とされてはいかがでしょうか?映像作品としての評価出来る。研究としてのプロジェクトの位置づけも研究として考察して欲しい。
16 【研究奨励賞】

グロースハックに基づくモバイルキャンパスアプリの顧客起点マーケティング実践

静岡大学
情報学部行動情報学科
清野峻吾   近年、新サービスの開発では顧客データを利用することでコストを掛けずに新規顧客獲得、既存顧客維持を目指す傾向にある。一方で開発者らは顧客データを活用したサービス発展のためのベストプラクティスがないために成長のきっかけをつかめずに撤退を余儀なくされている。静岡大学遊橋研究室の学生主体でモバイルキャンパスアプリ「パンプラージュ」の開発、運用を行うプロジェクトも低コストでのサービス発展に取り組んでいるが、アクティブユーザ数が少ないという課題を抱え、サービスの停滞が続いている。そこで、パンプラージュ自体に成長する仕組みを組むことで低コストでの顧客起点マーケティング実践を可能にする手法として注目を集めるグロースハックを導入し、その手法における効果を検証する。 グロースハックについて理解できました。モバイルキャンパスアプリに対して継続的に利用されるような仕組みの展開が今後の期待するところかと思います。パンプラーシュの目的と既存のアプリとの連携で、更なる顧客獲得へ繋げると良いのではないかと思われる。
17 【研究奨励賞】

企業後継者の大学・大学院在籍時の海外留学経験が企業家精神形成に与える影響

静岡大学
大学院
総合科学技術研究科
権田智子   本研究の目的は、中小企業後継者・後継候補者が大学や大学院在籍時に海外留学を経験することが、その後の企業家精神の形成に与える影響を明らかにすることである。従前の研究では、海外留学時の困難な体験が起業承継後に直面する困難に立ち向かう精神力の鍛錬に有効であることが明らかにされている。中小企業後継者・後継者候補の新しい事業や企業を創造するために要求される態度や発想,能力といった企業家精神の形成への影響についての研究は十分であるとは言えない。本研究では、中小企業経営者等に対するアンケートを通じたデータ収集とその分析を行い、海外留学経験と企業家精神形成との関係性を明らかにする。本発表では、本研究の計画についての報告を行う。 留学経験がもたらす、企業後継者の分析方法が分かりました。今後アンケートの実施をし、結果がどのようになるかがポイントになると思います。経営者に求められる資質の先行研究と、この研究のマッチングでより深掘りされた成果を期待します。
18 【研究奨励賞】

スマートフォン専業証券についての考察と今後の展望

静岡大学
大学院
総合科学技術研究科
中山有仁   本稿では、証券業界の代表的なFinTechサービスの一つであるスマートフォン専業証券について研究した。本研究のリサーチクエスチョンは「スマートフォン専業証券はビジネスモデルとして評価できるのか」である。このリサーチクエスチョンに対してマーク・ジョンソン(2011)の「顧客価値提案」「利益方程式」「主要経営資源」「主要業務プロセス」の4つの箱に関連付けて分析・評価する。具体的な研究方法は、財務分析・ヒアリング調査・サービス内容の調査・口座開設における実証実験・認知度と利用率のアンケート調査の5つである。最後に証券業界におけるスマートフォン専業証券分野への参入と顧客獲得に向けた戦略について今後の展望を述べる。 スマートフォン専業証券についての現状について、よく分析されている。今後の経営について、分析データとしてどのように展開できるかが研究課題ではないでしょうか。赤字でもサービスを提供する要因と未来のサービスへの試行、先行投資の是非など企業の課題も多いので期待しています。
19 【研究奨励賞】

LINEbotを用いた謎解きゲームによるアンケート回収率の向上:寸又峡での実証実験

静岡大学
情報学部行動情報学科
花谷すず菜・細貝光・大島友樹・山本拓未(静岡大学大学院)   観光地の活性化や魅力度の向上のためには、現状把握による観光客のニーズに適合したサービス開発と提供が求められる。そのために、アンケートやインタビュー等による調査が実施されることが多いが、観光客はそれらの調査に回答するインセンティブが少ないため、アンケート回収率が目標値に達しないことがある。本研究では、観光地におけるアンケート回収率の向上を目的に、アンケート機能付き謎解きゲームを、LINEbotを用いて開発し、従来の紙媒体アンケートよりも回収率を向上させることを目指す。実証実験は、静岡県川根本町観光課や同教育委員会、静岡県立川根高校の教員・生徒等の協力を得て、当該地域の主要観光地である寸又峡にて実施する。本研究発表では、実証実験に向けた準備状況等について報告を行う。 従来の紙媒体アンケートよりも回収率を向上のためのプランがしっかりと出来ています。今後の実際のアンケートの実施結果に期待します。実験結果によってどのような展開になるのか、先行事例の効果の検証と供に成功事例になる期待があります。
20 【研究奨励賞】

COVID-19等の感染症感染経路シミュレーションのためのアプリケーションの開発

静岡大学
情報学部行動情報学科
和田颯太郎・小塚公介   近年、コロナウイルスの感染拡大に伴い人々の行動が制限されている。また、コロナウイルスの感染者は日々増加しており、人々はこれまで以上に慎重な行動を求められることが予想される。 そこで、ウイルスの感染経路をシミュレーションするために、スマートフォンとBLE技術を用いて、人の動きや接触状況などの社会実験データを収集するアプリケーションを開発している。そこから得られたデータを数理モデルからの知見と統合することで、精度の高い感染流行予測を行うことができ、適切な感染予防対策を可能とすることが期待される。 また、コロナウイルスだけでなく、インフルエンザなどの他のウイルスの感染に関する研究にも活用が見込める。 設計はうまく出来ていると思います。 実用的な実践への活用に今後期待します。物理的距離測定のアプリで、この測定結果を感染経路へ結びつけてシミュレーションできると、とても良いソフト開発の報告になっていると思います。
21 【審査員特別賞】

地方都市のバス交通における路線所要時間推定モデルの提案

静岡大学
情報学部行動情報学科
中野蒼人 現在の地方都市では人口減少が大きな問題となっている.地方公共団体は交通インフラの不足,特に公共交通のサービス低下を要因の一つとして認識しており,政策や事業の施行を行っている.静岡県浜松市は大規模なモータリゼーションの進展により様々な交通問題を抱えているが,これらの改善には現状の分析と施策の評価が必要であり,実際の人々の移動データに基づいた検証を行うことが妥当であると考えられる.本研究では浜松市を対象としたパーソントリップデータを利用し,新たに環状のバス路線を導入した場合に市民のニーズと合致しているかについての分析を行い,またパーソントリップデータに対し,他の交通手段を使用した場合の所要時間推定モデルを構築する.結果,環状路線の導入によるバスの利用促進が期待され,特に自動車使用層への効果が高いことが分かった.   地方都市の問題を取り上げ、実測によるデータでの検証を行い、机上論で終わらない実践的な研究で、地域社会への貢献が期待される研究であることが評価されました。モデルがよく考えられています。今後の研究で実用化に期待します。 市民の行動パターンの持つ要素(時間、経費、緊急性、地域特性とか)の影響なども盛り込まれると更に良くなると思われます。
22 【審査員賞】

モバイルキャンパスアプリにおけるトークンエコノミー形成に向けた基盤構築

静岡大学
情報学部行動情報学科
梶貴広   近年、SNSの利用者数は増加しつづけている。その利用者の多くは自ら積極的に情報発信や発言をしない。学生が開発と運営を行っているキャンパスライフを支援するアプリ「パンプラージュ」でも、その問題に直面している。そこで、顧客が望ましい行動をとった場合にトークンと呼ばれるデジタル通貨を発行し有形無形のインセンティブと交換できるようにすることで特定の人やグループに対して望ましい行動を推奨するといった「トークンエコノミー」と呼ばれるデジタル通貨による閉じた経済圏をアプリ内に形成することでこの問題の解決を図った。 アプリ「パンプラージュに対する対策がよくわかりました。今後継続的にアプリが使われていくことに期待します。キャンパスアプリの利用者と利害が一致したとき、クーポン効果と言うべきものが発生しているような気がします。
23 【研究奨励賞】

キャッシュレス化によるDX推進

静岡大学
大学院
総合科学技術研究科
山本拓未   個人経営の店舗において、DXを成功させる要因としてどのようなものが挙げられるだろうか。本研究で検討するDXとは、個人店の経営者がデジタル技術をうまく活用し、日々業務改善を行う事として考える。大企業においてDXを成功させる要因は、「デジタル能力」と、「リーダーシップ能力」にあるとされているが、個人経営に着目したDXの成功要因について研究された例は無い。 そこで本研究では、DXの理論を用いて、個人経営におけるDXの成功要因を明らかにする。商店街の個人店において、キャッシュレス決済システム導入前後の利益率変化についてアンケート調査を行う。デジタル技術の導入だけでは利益率を上げることは難しい。システムの導入前後で利益率の上がっている個人経営の店舗からDXの成功要因を調査する。 小規模個人店舗におけるキャッシュレス化のモデルの内容がよくわかりました。今後の結果に期待します。決済が経営に及ぼす効果はついて十分に検証して、その影響効果としてのデジタルとリーダーシップとの将来性について考察を進めていただけたらと思います。
24 【研究奨励賞】

プラットフォームサービスの持続性を求めて - パンプラージュの運営活動報告-

静岡大学
情報学部行動情報学科
赤熊佑斗・鶴崎弘晃・表梨花子・山口翼   静岡大学の学生向けアプリ「パンプラージュ」は、静岡大学遊橋研究室及び情報学部・先端情報学実習をベースに運用されている。令和2年度の先端情報学実習は、ユーザの拡大を目指して、①学生記事等のコンテンツの拡充、②チラシ配り、SNSを活用したアプリの広報活動、③新たな機能実装に向けて技術力を高めるための学習、の3つに取り組んできた。 これら活動を、プラットフォームの好循環のパターンで整理し、我々の活動がパンプラージュの運営にどのように貢献出来たのかを報告すると共に、サービス提供における好循環を持続させるにはどのような取り組みが必要か、その方策について提言をおこなう。 パンプラージュの運営活動についてよくわかりました。今後継続性にアプリが使われることに期待します。提供者で有り利用者でもある研究者もデータとして活用しても良いのではないか。リリースしたコンテンツのログ管理での評価があれば更に面白いものになるのではないか。
25 【審査員賞】

手書きの効果

中京大学
経営学部
大島沙織   現在、オンライン上でのコミュニケーションの機会が増え、手書きよりも非手書きの方が多く活用されており、書くという行為がペンを持って行うものからタイピングに移行しつつある。そのため、実際のところ手書きは重要視されておらず、このままでは手書きの習慣が減ってしまうのではないかと考えられる。このような疑問から、本研究では、デジタル化が進む現代で手書きが重要視されていない背景を先行研究とインタビューから検討し、手書きの効果について改めて考え、企業への施策を提案し、今一度手書きの良さを伝えることを目的とする。これらを踏まえて非手書きと比較しながら手書きによってどのような効果や価値が生じるのか考察する。 手書きの効果についてよくわかりました。使い分けに対しての今後の研究を期待します。企業内で活用するには、TPOで使い分ける場の設定と考察が必要と考えられます。受け手である相手側のメリットデメリットは研究対象に含まれると更に良くなるのではないか。発表資料の要所にもう少し手書きを入れたら更にアピールできたのでは?
26 【研究奨励賞】

仮想的有能感

中京大学
経営学部
小西亮輔   有能感には他者軽視をすることで自尊感情の回復を図る仮想的有能感が存在する。また有能感は、他者軽視と自尊感情の強弱の度合いから自尊型・萎縮型・全能型・仮想型に分類することができる。自尊型は自尊感情が高く、他者軽視を行わない。全能型・仮想型は他者軽視を行い、自尊感情は不安定という特徴がある。 本研究の目的は、企業内に存在する仮想型の特徴を持つ従業員を自尊型に導くことである。そのために、有能感の種類と特徴を提示し、企業に対して仮想的有能感を持つ従業員のへ対応の施策を提案した。特に、他者軽視を抑え、自尊感情を高めるためにその人自身を受け入れる「寄り添い」が求められることを示した。 着眼点が非常に良かったと思います。自尊感情を高めるための具体的な方法が今後の研究課題ではないでしょうか?人材育成における1on1の可能性研究でも十分によいのではないでしょうか。
27 【優秀賞】

大学生の親の接触頻度と態度が進路決定へ与える影響および親を巻き込んだ施策の提案

中京大学
経営学部
津田琉伊   本研究の目的は、就職活動を行う際に、学生はどのくらい親の意見の影響を受けるのか、どのような関わり方をされているのかについて調査し、学生と親の考え方のギャップを埋められる施策を提案することである。これを達成するための取り組みとして、就職活動における親の影響力を問うアンケートや、関わる中でどのような態度を取られていたかについてインタビューを行い、親の態度パターンを洗い出してポジショニングマップを作成した。そして、本研究では最も懸念すべきと考える「干渉型」の親に焦点を当てた。親と学生を別会場に動員し、お互いの時代の就活活動の仕組みを知り、チャットを用いて匿名で本音を言い合えるような施策案を提示した。 着眼点が非常に良かったと思います。実際の効果の検証も今後の研究課題ではないでしょうか?親を巻き込む以上、親側のデータがないので学生側からの一方的な提案に見えてしまいます。
28 【審査員特別賞】

ベトナム人向けの日本語学習コンテンツ提供に関する調査研究

静岡大学
情報学部行動情報学科
ABPコース
グェン・トゥイ・ユーン
  近年、日本の在留ベトナム人が大幅に増加している現状を踏まえ、政府または、地方の公共団体において様々な日本語教育を展開しています。日本語教室によってはベトナム人を含めて外国人を対象とする日本語教育が多数存在します。しかし、日本語教育だけでは、日本語で会話する機会が多くありません。従って、実際に日本で生活するのは多少「言葉の壁」を感じられます。本研究では、実際に日本語でコミュニケーションをする機会が少ないベトナム人向けに、日本語学習コンテンツの提供を行います。 日本語を教える側(教員・方法・テキスト・カリキュラム)の問題も内在しているテーマだと思います。日本語習得には「場」が重要です。対面で会話することが重要です。ICTの活用でそれを克服できればよいですが。いずれにせよ、日本語を教える日本人側にも多くの示唆を与える、とても良い研究です。頑張ってください。日本語でコミュニケーションをする機会が少ないベトナム人の実態についてよくわかった。改善方法などの提案などが、今後の研究課題ではないでしょうか?